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アルツハイマー病:プログラニュリンは複数のアルツハイマー病マウスモデルでアミロイドβの沈着とその毒性を防止する
Nature Medicine 20, 10 doi: 10.1038/nm.3672
プログラニュリン(PGRN)の遺伝子であるGRNのハプロ不全は、家族性前頭側頭葉変性症(FTLD)の原因であり、また、ヒトやマウスモデルでは自然免疫応答を変化させる。GRNの多型は、遅発性のアルツハイマー病(AD)と関連している可能性が考えられる。しかし、ADの発症機序におけるPGRNの役割は分かっていない。本論文では、PGRNがアミロイドβ(Aβ)沈着を抑制することを示す。複数のADマウスモデルで、ミクログリアでのPGRN発現を選択的に低下させるとファゴサイトーシスが障害され、Aβ斑量が増加(3倍)し、認知障害が増悪した。アミロイド斑病態の進行がより速いADマウスでは、レンチウイルスを介するPGRNの過剰発現によってアミロイド斑量が低下した。Aβ斑の量は、海馬のPGRNレベルと負の相関関係にあり、これはPGRNがAβ斑沈着に対して用量依存的な抑制効果を持つことを示している。PGRNはAβの毒性に対しても防御的に働く。ADマウスでレンチウイルスを介してPGRNを過剰発現させると、空間記憶障害と海馬ニューロン喪失が防止された。Aβの沈着や毒性に対するPGRNの防止効果は、治療と重要な関わりがある。PGRNの増量はPGRNを欠損するFTLDやADの治療法となるだろうと我々は考えている。