がん:PML-TP53軸の活性化は急性前骨髄球性白血病治癒の基盤である
Nature Medicine 20, 2 doi: 10.1038/nm.3441
急性前骨髄球性白血病(APL)は、PML(promyelocytic leukemia)とレチノイン酸受容体αからなる融合タンパク質(PML-RARA)によって引き起こされ、この融合タンパク質は核内受容体シグナル伝達とPML nuclear body(NB)の形成を妨げる。APLは、レチノイン酸(RA)や三酸化ヒ素が用いられる標的療法により確実な治癒が可能な唯一の悪性腫瘍であり、これらの薬剤は共にPML-RARAの分解を引き起こすが、その反応経路は重複していない。しかし、治療効果の細胞レベルや分子レベルでの決定要因についてはまだはっきりしていない。我々は、正常な機能を持つPml-Trp53(transformation-related protein 53)軸が、APLマウスモデルで白血病幹細胞根絶のために必要であることを示す。RAが誘発するPML-RARAの分解が起こると、正常なPmlがNB再構成を誘導し、Trp53応答を引き起こす。この応答はアポトーシスではなく、老化の特徴を示し、最終的にAPL誘発活性を停止させる。三酸化ヒ素はPML-RARAの分解誘導の他に、正常なPMLを標的としてNBの再構成を促進する。この結果は、三酸化ヒ素を単独、あるいはRAと併用した際に見られる治療効果を説明できる可能性がある。治療によって引き起こされるNB修復により生じるPml-Trp53チェックポイントは、PML-RARAにより引き起こされるAPLに特異的で、RA耐性のPLZF(promyelocytic leukemia zinc finger)-RARA変異を持つ白血病に対しては作用しない。さらに、NBの生成は新薬開発につながりうることから、APL以外の白血病でも治療に使える可能性がある。