免疫:抗ウイルス免疫においてマトリックスメタロプロテアーゼ12が転写に果たす新たな役割
Nature Medicine 20, 5 doi: 10.1038/nm.3508
インターフェロンα(IFN-α)は抗ウイルス免疫に必須である。だが、マトリックスメタロプロテアーゼ12(MMP-12)あるいはIκBα(NFKBIAにコードされる)が存在しない場合、IFN-αはウイルスに感染した細胞の細胞質に留まり、分泌されないことが分かっている。我々のこの知見は、活性化されたIκBαがウイルス感染細胞からのIFN-αの搬出を仲介していること、またMmp-12−/ −マウスの細胞は野生型マウス細胞で発現されるIκBαを発現できず、そのためにIFN-αの細胞外への搬出が障害されて、コクサッキーウイルスB3型感染に対して致死性を示し、またRSウイルスがより強い病原性を示すようになることを示唆している。本論文では、MMP-12はマクロファージによって分泌された後にウイルス感染細胞内へ輸送されることを示す。HeLa細胞でも、MMP-12は核へ輸送されて、そこでNFKBIAのプロモーターに結合し、転写を促進する。我々はまた、MMP-12の基質遺伝子エキソンへの結合と、MMP-12が仲介する基質タンパク質自体の切断の両方によって抑制されるという二重の調節を受けている基質を明らかにした。細胞内MMP-12はNFKBIAの転写を仲介し、それがIFN-αの分泌と宿主防御につながる一方で、細胞外MMP-12は全身に分布しているIFN-αの受容体2への結合部位を切断することで、過剰な免疫応答を防止している。全身に分布したIFN-αの除去というMMP-12の予想外の役割と一致して、コクサッキーウイルスB3型に感染した野生型マウスに膜を通過できないMMP-12阻害剤を投与すると、全身のIFN-αレベルが上昇し、膵臓内でのウイルス複製が抑制されるが、細胞内MMP-12は影響を受けない。これらの結果は、細胞外MMP-12の阻害が抗ウイルス治療法開発の新しい手法となる可能性を示している。