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心疾患:フリードライヒ運動失調症マウスモデルでの重度ミトコンドリア心筋症の遺伝子治療による防止と回復
Nature Medicine 20, 5 doi: 10.1038/nm.3510
フリードライヒ運動失調症(FRDA)は、神経変性、肥大型心筋症と糖尿病を特徴とするミトコンドリア性疾患で、死亡原因として最も多いのは心不全である。FRDAは、鉄−硫黄(Fe-S)クラスターの生合成に必須のミトコンドリアタンパク質であるフラタキシン(FXN)のレベル低下が原因である。FRDA患者の心筋では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化の障害、生体エネルギー論的不均衡、Fe-Sクラスター酵素の活性低下とミトコンドリアでの鉄過剰が生じている。これまでのところ、FRDA心筋症の治療法は存在しない。心筋および骨格筋でフラタキシンを完全に欠失させた条件付きマウスモデル(Mck-Cre-FxnL3/L−マウス)は、FRDA心筋症のほとんどの特徴を再現するが、その経過はより急速で重篤である。本論文では、このようなマウスの静脈にヒトFXNを発現するアデノ随伴ウイルスrh10ベクターを注入すると、心疾患の発症が完全に防止されたことを示す。また、このマウスでは、心不全の発症後にフラタキシンを発現するベクターを投与することで、心筋症を機能レベル、細胞レベルおよび分子レベルで数日以内に完全に回復できた。我々の結果は、重度のエネルギー的不全および微細構造の崩壊を起こした心筋細胞が、遺伝子治療によって迅速に救済および再構築されうることを実証しており、またFRDA心筋症治療における遺伝子治療の可能性について前臨床的な概念実証を確立するものである。