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がん:腫瘍内皮のFasLは選択的な免疫障壁を構築して腫瘍に対する免疫寛容を促進する

Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3541

本論文では、腫瘍へのT細胞侵入と腫瘍内皮障壁を調節する新たな機構について報告する。我々はヒトとマウスの固形腫瘍の血管系で細胞死メディエーターのFasリガンド(FasL、別名CD95L)の選択的な発現を検出したが、この発現は正常な血管系では見られなかった。このような腫瘍では、FasLが発現しているとCD8+制御性T(Treg)細胞の侵入が少なく、FoxP3+制御性T(Treg)細胞が優勢となっていた。腫瘍由来の血管内皮増殖因子A(VEGF-A)、インターロイキン10(IL-10)およびプロスタグランジンE2(PGE2)は、協調的に働いて内皮細胞でのFasL発現を誘導し、この発現によってエフェクターCD8+ T細胞を殺傷する能力が獲得された。しかし、Treg細胞はc-FLIP発現レベルがより高いためにこの細胞は殺傷されない。マウスで、遺伝学的あるいは薬理学的にFasLを抑制すると、腫瘍拒絶性CD8+T細胞の流入の方がFoxP3+ T細胞よりもかなり多くなった。VEGFとPGE2を薬理学的に阻害すると、腫瘍拒絶性CD8+T細胞の流入の方がFoxP3+ T細胞よりも顕著に多くなり、これはFasL発現低下に依存していて、CD8依存的な腫瘍増殖抑制につながった。従って、腫瘍では傍分泌機構によって腫瘍内皮に細胞死に対する障壁が構築されており、これは免疫寛容の確立と腫瘍の運命決定に重要な役割を担っている。

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