Letter
糖尿病:プロテクチンDXはミオカイン-肝血糖調節経路の活性化によりインスリン抵抗性を改善する
Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3549
我々は以前、ω-3脂肪酸由来の炎症収束メディエーター群(プロテクチンと命名した)の生合成低下が、肥満の高脂肪食飼育マウスで全体的な炎症収束能力の障害、炎症やインスリン抵抗性と関連することを明らかにした。これらの知見は、代謝疾患の治療に対するプロテクチンの使用可能性についてのより直接的な研究を促すことになった。本論文ではプロテクチンDX(PDX)が、その抗炎症作用とは異なる、予想外の血糖調節活性を持つことを示す。PDXは典型的なミオカインであるインターロイキン6(IL-6)の骨格筋からの分泌を選択的に刺激し、それによってミオカイン-肝臓シグナル伝達を開始させ、それが糖新生プログラムのSTAT3(signal transducer and activator of transcription 3)を介する転写抑制によって肝臓の糖産生を低減する。PDXのこのような作用は、Il6ヌルマウスでは消失した。PDXはまた、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)も活性化したが、それはIL-6とは無関係であることが分かった。肥満性糖尿病のdb/dbマウスにPDXを投与すると骨格筋のIL-6分泌量が増加し、インスリン感受性が大幅に改善されるが、脂肪組織の炎症には影響が見られない。従って今回の知見は、PDXをベースとする、筋選択的なIL-6分泌促進物質の開発が、インスリン抵抗性や2型糖尿病の治療のための新しい治療法につながることを証拠立てている。