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がん:HippoコアクチベーターYAP1の救済は血液がんでDNA損傷誘導性アポトーシスを引き起こす
Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3562
上皮性がん細胞では、がん遺伝子により誘導されたDNA損傷がゲノム不安定性を誘発するが、アポトーシスはがん抑制遺伝子p53の不活性化によって妨げられている。血液がんでは、進行中のDNA損傷とアポトーシス抑制機構の関連性はほとんど分かっていない。我々は、多発性骨髄腫、リンパ腫、白血病などの血液系悪性腫瘍で広範なDNA損傷を見いだした。これはABL1キナーゼの核への再局在化を中心とした、p53非依存的なアポトーシス促進性ネットワークの活性化につながる。核内ABL1は、正常細胞ではHippo経路のコアクチベーターYAP1との相互作用を介して細胞死を誘導するが、上記のような血液系悪性腫瘍では、YAP1が低レベルであることによって核内ABL1が誘導するアポトーシスが障害されると分かった。YAP1はセリン/スレオニンキナーゼSTK4により制御されている。STK4を遺伝学的に不活性化するとYAP1レベルが回復し、in vitroとin vivoで細胞死を引き起こした。従って、我々のデータは内在性のDNA損傷がありYAP1レベルが低いがん細胞を選択的に標的とする新たな合成致死戦略を明らかにしている。