がん:初代培養オルガノイドで見られた多様な消化管組織の発がん性形質転換
Nature Medicine 20, 7 doi: 10.1038/nm.3585
上皮系および間葉系の構成要素を含む初代培養オルガノイドをがんのモデル作製に使えば、in vivo系での多系譜の分化や生理的特性の精密な再現と、形質転換細胞株のin vitroでの操作の容易性とが両立すると期待されている。今回我々は、単一の気相液相界面培養法を改変せずに用いて、マウスの結腸、胃および膵臓にそれぞれ由来する初代培養上皮・間葉系オルガノイドに、発がん性変異を遺伝子操作によって導入した。膵臓オルガノイドと胃オルガノイドは、G12D変異を持つKras(KrasG12D)の発現、p53喪失、もしくはその両方の結果として異形成を来し、in vivo移植の後に速やかに腺がんを生じた。対照的に、初代結腸オルガノイドでは、進行性形質転換を起こして、in vitroで浸潤性腺がん様組織の特性を示し、in vivoでは腫瘍原性を示して大腸がん(CRC)のマルチヒットモデル(多段階発がんモデル)が再現されるのに、Apc、p53、KrasG12DおよびSmad4の4種類の変異の組み合わせを必要とした。これに比べて、小腸オルガノイドではもっと無差別的に形質転換が起こる。結腸オルガノイド培養によって、マイクロRNAのmiR-483がIGF2(insulin-like growth factor-2)11p15.5 CRCアンプリコンにある主要なドライバーがん遺伝子で、in vitroで異形成を、in vivoで腫瘍原性を誘導することが機能的に確認された。これらの研究結果は、非常に扱いやすい初代オルガノイド培養系が、がんのモデル作製や、多様な消化管組織におけるドライバーがん遺伝子の確認に広く有用であることを示している。