Article

感染:C型肝炎ウイルスRNAレプリカーゼの内因性の脂質過酸化による調節

Nature Medicine 20, 8 doi: 10.1038/nm.3610

ウイルス感染には酸化による組織損傷を伴うことが多いが、それがウイルスの複製にどのような影響を及ぼすかについてはほとんど分かっていない。我々は、C型肝炎ウイルス(HCV)の多数の遺伝子型が酸化による膜損傷に対して非常に感受性が高く、これは他の病原性RNAウイルスとは異なる、HCVの本質的特徴であることを示す。脂質の過酸化は部分的にはスフィンゴシンキナーゼ2によって調節されており、Huh-7細胞や初代ヒト肝芽細胞でのHCV複製を厳しく制限している。内因性酸化による膜損傷は、in vitroでは直接作用型抗ウイルス薬の50%有効濃度を低下させ、このことは、NS3-4AプロテアーゼやNS5Bポリメラーゼのような膜結合型のHCVレプリカーゼ構成因子のコンホメーションが厳密に調節されていることを示唆している。脂質の過酸化に対する抵抗性は、このようなタンパク質の膜貫通領域や膜近傍のアミノ酸残基と遺伝学的に関連付けられ、またHCVの非典型株であるJFH1によって示されるように、細胞培養系でのロバストな複製に不可欠である。従って、典型的な野生型HCVのレプリカーゼは脂質の過酸化によって他に見られない調節を受けており、 これがストレスを受けた組織でのHCV複製低下の機序であり、おそらく長期間のウイルス持続感染を促進すると考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度