創薬:Gpr120選択的アゴニストは肥満マウスのインスリン抵抗性と慢性炎症を改善する
Nature Medicine 20, 8 doi: 10.1038/nm.3614
ω–3脂肪酸(ω–3-FA、別名n-3脂肪酸)が強い抗炎症作用を及ぼすことがあるのはよく知られている。ω–3-FAは、魚肉製品や栄養補助食品、医薬品として一般的に摂取されており、血漿トリグリセリド濃度の低下、アテローム性動脈硬化症の改善、インスリン感受性の上昇など、健康に種々の有益な影響があるとされている。我々は、Gpr120がこれらの脂肪酸に対する機能的受容体であり、ω–-FAはin vivoおよびin vitroの両方で、Gpr120に依存してロバストな抗炎症作用とインスリン感受性促進作用をもたらすことを報告する。実際に、ヒトではGPR120をコードする遺伝子(FFAR4)に、肥満や糖尿病を起こしやすくする遺伝的変異が報告されている。しかし、Gpr120の慢性的活性化を維持するために摂取しなければならない魚油の量は実際問題としては多すぎるので、親和性の高い低分子のGpr120アゴニストは臨床的に有用だろうと考えられる。そのため、製薬分野ではGpr120は創薬標的として広く研究されている。Gpr40は、また別の脂質感知Gタンパク質共役型受容体で、Gpr120に対してGpr40よりも高い選択性を示す化合物を見つけ出すことは難しいとされてきた。本研究では、Gpr120に選択的な高い親和性を示し、経口投与可能な低分子Gpr120アゴニストのcpdAについて報告する。この分子はin vitroではマクロファージに対して、in vivoでは肥満マウスで、強力な抗炎症作用を示す。高脂肪食を摂取した肥満マウスにGpr120アゴニストを投与すると、耐糖能の改善、血中高インスリン濃度の低下、インスリン感受性の上昇、肝細胞内脂肪蓄積の減少が見られた。この結果は、Gpr120アゴニストが将来、2型糖尿病などのヒトのインスリン抵抗性状態の治療に使える新たなインスリン感受性改善薬となる可能性を示唆している。