HIV:HIV-1の制限にはSAMHD1のリボヌクレアーゼ活性が必要である
Nature Medicine 20, 8 doi: 10.1038/nm.3626
HIV-1の制限因子であるSAMHD1(SAM domain–and HD domain–containing protein 1)は、細胞内のdNTPプールを枯渇させることでHIV-1複製を阻害すると考えられている。しかし、SAMHD1のHIV-1制限活性は、リン酸化によって細胞内dNTPレベルを低下させることなく調節される。これは、HIV-1制限の際のSAMHD1 dNTPアーゼ活性の役割と一致しない。本論文では、SAMHD1にはRNアーゼ活性があり、HIV-1制限にはこのRNアーゼ機能が不可欠だが、dNTPアーゼ機能は不可欠ではないことを示す。RNアーゼあるいはdNTPアーゼ活性の欠損について、アイカルディ・ゴーシェ症候群(AGS)に関連するSAMHD1の変異とSAMHD1のアロステリックなdGTP結合部位の変異の酵素学的特徴を調べることで、これらの機能の片方あるいは両方の消失を引き起こすSAMHD1の点変異が明らかになった。RNアーゼ活性陽性でdNTPアーゼ活性陰性のSAMHD1D137N変異体はHIV-1感染を制限できるが、RNアーゼ活性陰性でdNTPアーゼ活性陽性のSAMHD1Q548A変異体はHIV-1を制限できない。SAMHD1は、HIV-1の細胞への感染の初期にHIV-1 RNAに結合し、これを分解する。健常ドナー由来のマクロファージとCD4+ T細胞でSAMHD1をサイレンシングすると、HIV-1 RNAの安定性が上昇し、細胞はHIV-1感染を許容するようになる。また、細胞でのSAMHD1のT592のリン酸化はそのRNアーゼ活性を負に調節して、HIV-1制限を障害する。我々の結果は、SAMHD1のRNアーゼ活性は、HIV-1 RNAの直接分解により、HIV-1感染防止に働いていることを明らかにしている。