Review
再生医学:組織再生の下準備をする — 機序から治療まで
Nature Medicine 20, 8 doi: 10.1038/nm.3653
慢性的な疾患は組織や器官に損傷を与え、こうした損傷は生活の質を低下させ、また多くの場合に治療が難しい。幹細胞は、損傷した組織に「細胞という種を植えつける」ことによる変性疾患治療に有望とされているが、幹細胞の再生能力は、組織損傷に対する局所的免疫応答により調整される調節ネットワークの影響を受ける。こうした免疫応答ではマクロファージが損傷応答の中心的成分で、また組織修復の調整因子でもある。最近の研究は、限局的炎症反応のような局所的な間質系微小環境(幹細胞を種子と考えた場合の「土壌」にあたる)の細胞成分やシグナル伝達成分が、組織再生の成功に寄与する仕組みに注目するようになってきている。本総説では、組織再生の基本原理と、局所的に働く構成成分が再生過程で果たすと考えられる重要な役割について論じる。「種子と土壌」の概念を再生医学へ当てはめることは、細胞を用いる治療法の開発、あるいは内因的な修復の促進に対する期待を高めるだろう。