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糖尿病:中枢で肥満と老化によって誘導されるトランスフォーミング増殖因子βの過剰はRNAストレス応答を介して糖尿病発症を促進する

Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3616

脳、特に視床下部はグルコース恒常性の制御に関わっているが、この器官が糖尿病の発症に因果的に病因として関わっているのかどうかは明らかでない。我々は、視床下部でのトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)の産生が、肥満だけでなく、老化によっても過剰になることを見いだした。肥満と加齢は2型糖尿病の一般的な病因因子である。薬理学的および遺伝学的な手法を使って、中枢のTGF-β過剰は体重変化と無関係に高血糖症や耐糖能障害を引き起こすことが明らかになった。さらに、in vivoで細胞特異的遺伝子解析を行い、アストロサイトとプロオピオメラノコルチンニューロンが中枢性TGF-βの産生と糖尿病促進作用をそれぞれ担っていることが分かった。その機構は、過剰なTGF-βは視床下部でRNAストレス応答を誘導し、その結果、炎症性のNF-κBの阻害因子であるIκBαのmRNAの崩壊が加速されるというものである。これらの結果は、視床下部での異常なmRNA代謝が引き起こすNF-κB活性化が、肥満や老化と視床下部での炎症、さらには2型糖尿病とを結びつける機序であることを示している。

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