薬剤開発:CAPON-nNOS結合が新しい不安緩解薬開発の標的となる可能性
Nature Medicine 20, 9 doi: 10.1038/nm.3644
不安障害は非常に広く見られる精神疾患であって、哺乳類の脳での不安制御機構のさらなる解明や新しい不安緩解薬の開発が求められている。本論文では、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)とそのリガンドであるCAPON(carboxy-terminal PDZ ligand of nNOS)の間の結合が、不安緩解薬の標的となりうることを報告する。マウス海馬で、完全長CAPONを過剰発現させることによりnNOS-CAPONの相互作用を増強すると不安誘発様行動が生じるが、CAPON-125C(C-terminal 125)あるいはCAPON-20C(20 amino acids of CAPON)の過剰発現、あるいはTat-CAPON-12C(TatおよびCAPONのC末端の12個のアミノ酸からなるペプチド)の送達によりnNOSからCAPONを解離させると、不安緩解様効果が生じた。慢性的な軽度のストレス(chronic mild stress: CMS)下に置かれたマウスでは、海馬でnNOS-CAPON結合が大幅に増加しており、その結果、不安誘発様表現型が見られた。nNOS-CAPON結合を破壊すると、CMS誘導性の不安誘発様行動が回復した。さらに、nNOS-CAPON結合の小分子阻害薬は迅速に不安緩解様効果を示した。Dexras1(dexamethasone-induced ras protein 1)−ERK(extracellular signal−regulated kinase)シグナル伝達が、nNOS-CAPON結合の行動効果に関与していた。従って、nNOS-CAPON結合は、Dexras1-ERKシグナル伝達の調節を介して、不安関連行動の調節に関与しており、有望な不安緩解薬開発の標的となる可能性がある。