Letter

薬剤動態:殺菌活性と結核病巣への薬剤分布の間の関連

Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3937

結核(TB)治療薬開発の主要な目的は、投薬期間を短縮する新しい抗生物質を発見して治癒率を改善し、憂慮すべき薬剤耐性出現を防止することである。本論文では、バイオセーフティー封じ込め施設でマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)質量分析画像化装置を用いて、重要な殺菌薬であるリファンピシンとピラジンアミドが肺病巣のTB感染部位に効率的に浸透することを明らかにした。リファンピシンは、持続性結核菌が常在する重要な病巣である乾酪壊死部にも蓄積する。対照的にモキシフロキサシンは、in vitroでは薬剤存在下で特定のニッチに存続するヒト結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の一部に対して効果を発揮し、マウスでは治療期間を短縮したが、乾酪壊死部にはあまり拡散しない。これは最近の臨床試験でモキシフロキサシンが治療期間を短縮できていないことと合致する。薬剤の空間的分布や病巣への蓄積動態のこのような違いは、単剤療法の際に特定のニッチで結核菌が残存できる時間的・空間的範囲を作り出す可能性があり、多剤耐性TBを徐々に生じさせているのではないかと考えられる。我々は、ヒト肺に見られる主要な病巣型でのTB薬の量的および空間的分布特性に基づいて抗生物質の新しい投与計画の優先順位を決めるという、これまでとは異なるワーキングモデルを提案する。病巣への浸透が治療転帰に寄与する可能性があるという今回の知見はTBに広く関係する。

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