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がん:ヒストンリシンメチルトランスフェラーゼKMT2DはB細胞リンパ腫発症を抑制する遺伝子発現プログラムを持続させる
Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3943
リシン特異的なヒストンメチルトランスフェラーゼKMT2Dをコードする遺伝子は、濾胞性リンパ腫およびびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫で最も高頻度に変異が見られる遺伝子の1つだが、KMT2Dの変異がリンパ腫発症に及ぼす生物学的影響は分かっていない。今回我々は、KMT2Dが真の腫瘍抑制因子として機能すること、またB細胞でKMT2Dを遺伝的に除去するとマウスのリンパ腫発症が促進されることを示す。KMT2Dを欠失させると胚中心消失が遅延し、B細胞の分化やクラススイッチ組換えが障害される。統合的ゲノム解析では、KMT2DがヒストンH3リシン4(H3K4)のメチル化と、CD40、JAK-STAT、Toll様受容体およびB細胞受容体が関わるシグナル伝達経路の遺伝子などの一連の遺伝子の発現に影響を与えることが示された。KMT2Dのこれら以外の標的に、TNFAIP3、SOCS3やTNFRSF14などの変異が頻発する腫瘍抑制因子の遺伝子が含まれることは重要である。従って、KMT2D変異は、B細胞活性化経路を制御する腫瘍抑制因子遺伝子の発現を擾乱することによって悪性増殖を促進する可能性がある。