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がん:BETファミリータンパク質とヒストンデアセチラーゼの同時阻害はエピジェネティクスに基づいた有望な膵管腺がん治療法である
Nature Medicine 21, 10 doi: 10.1038/nm.3952
膵管腺がん(PDAC)は最も死亡率の高いヒトがんの1つで、あらゆる治療戦略に抵抗性を示す。今回我々は、クロマチン調節因子を標的とする低分子阻害薬について、PDACの治療薬となる可能性を検証した。BET(bromodomain and extraterminal)ファミリータンパク質の阻害薬であるJQ1は、MYC活性と炎症性シグナルの両方を阻害することにより、マウスでPDACの発症を抑制する。ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤であるSAHAはJQ1と相助的に働いて細胞死を増やし、進行したPDACをさらに強力に抑制する。さらに、CRISPR-Cas9による遺伝子編集技術をマウスの成体膵臓で直接用い、BETとHDACの両方を同時に阻害する際にp57(別名KIP2あるいはCDKN1C)の脱抑制が起こることが、PDACでの併用療法による細胞死誘導に必要であることが明らかにされた。SAHAはヒトへの使用が認可されており、JQ1に類似した分子が臨床試験で検証中である。従って、今回の研究はエピジェネティクスを基盤とする有望な治療戦略を明らかにしており、この方法は致死的なヒト腫瘍での実施が速やかに実現する可能性がある。