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幹細胞:PAR1シグナル伝達はEPCRを発現する骨髄造血幹細胞の保持と動員を調節する
Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3960
長期造血再構築能を持つ造血幹細胞(LT-HSC)の骨髄での保持は、造血だけでなく骨髄毒性傷害の防御にも不可欠である。今回我々は、これまで血液凝固に関連すると見なされてきたシグナル伝達カスケードが、EPCR(endothelial protein C receptor)陽性(EPCR+)LT-HSCの骨髄での保持や、プロテアーゼ活性化受容体1(PAR1)によって仲介される2つの経路による血液中への動員をも制御していることを報告する。トロンビン-PAR1シグナル伝達は一酸化窒素(NO)産生を誘導し、それがTACE(tumor necrosis factor-α-converting enzyme)によるEPCRのシェディング、CXCL12-CXCR4に誘導される幹・前駆細胞の運動性増強とその迅速な動員につながる。逆に、骨髄の血管はaPC(activated protein C)の豊富な微小環境となり、NO産生の制限、Cdc42活性の低下およびインテグリンVLA4の親和性や接着の増強により、EPCR+ LT-HSCが保持される。aPC-EPCR-PAR1シグナル伝達によるNO産生の阻害は、骨髄から出る前駆細胞の減少、骨髄に保持されるNOlow EPCR+ LT-HSCの増加につながり、化学療法誘発性の血液学的障害や死からマウスを防御した。我々の研究は、NO産生の制御により骨髄EPCR+ LT-HSCの維持と動員の均衡を保つのにPAR1およびEPCRが担う新しい役割を明らかにしており、これは幹細胞移植の臨床応用にも関わってくるだろう。