Editorial データ共有で命を救う 2015年11月1日 Nature Medicine 21, 11 doi: 10.1038/nm.3991 公衆衛生に関わる重大な緊急事態が生じた場合のデータ共有に関して、9月初めにジュネーブで会議が開催された。参加者の多くは、2014年の西アフリカでのエボラ熱大流行の際に病原体ウイルスのゲノム塩基配列解読に直接関わっていたり、臨床あるいは疫学的なデータや実際の調査データを使用したりした人たちである。彼らは、こうした事態が起こった際のデータ共有の基準と過程の改善が緊急に必要であることを身をもって体験したのだった。エボラ流行の際はウイルスのゲノム塩基配列データの公開が遅れたことで流行防止対策は大きく妨げられた。今回の会議では、データ共有への障害物となるプライバシーの問題や政府の規制、データを扱う人材や時間の不足、データのジャーナル掲載に先立つ公開がもたらすさまざまな問題点などが挙げられ、解決法が検討された。学術論文を掲載するジャーナルは、重要データの迅速で幅広い共有が妨げられないことを保証すべきである。また研究費助成機関や研究者もこうした動きに対して、応分の役割を果たさなくてはいけない。今回の討論結果はWHOに提出され、承認が待たれている。Natureおよび姉妹誌は、公衆衛生的緊急事態にデータ共有を妨げないという誓約を行い、これは直ちに有効となっている。 Full text PDF 目次へ戻る