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ウイルス感染症:TAM受容体Mertkは血液脳関門の完全性維持により神経侵襲性ウイルスの感染を防止する
Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3974
TAMの受容体であるTyro3、Axl、Mertkは受容体型チロシンキナーゼで、そのリガンドであるGas6およびProtein Sが結合すると、宿主の自然免疫応答を抑制するようになる。これは、リガンドがアポトーシス細胞の表面のホスファチジルセリンを認識することによっている。多くのエンベロープウイルスは、アポトーシス細胞を模倣してそのエンベロープ膜の外層にホスファチジルセリンを提示しているので、TAM受容体を活性化して抗ウイルス応答を抑え込むことができる。それゆえ、TAM受容体を欠失させれば抗ウイルス応答が増強されて、ウイルス感染が防止されるのではないかと我々は考えた。しかし予想に反して、MertkとAxlの両方または片方を欠失させたマウスは、神経侵襲性のウエストナイルウイルスおよびラクロース脳炎ウイルスへの感染性が高まっていたが、Tyro3欠失ではこのような現象は見られなかった。感染性上昇という表現型は、血液脳関門の透過性増大と関連しており、それによってウイルスの脳への侵入および感染が促進されていた。Mertkの活性化はインターフェロンβと相乗的に働いて細胞間結合を緊密化し、ウイルスが脳微小血管内皮細胞を通過するのを阻止する。TAM受容体は神経侵襲性ウイルスによる発症を制限するため、今回の知見は、目下臨床開発の段階にあるTAMアンタゴニストに関わってくる。