Article

脳疾患:ヒトの限局性皮質異形成での細胞移動障害を引き起こすのはAKT3-FOXG1-reelinネットワークである

Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3982

限局性皮質形成障害(FMCD)は、小児の薬剤抵抗性てんかんの大半を占める。PI3K (phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate-3-kinase)–AKT(protein kinase B)–mTOR(mammalian target of rapamycin)経路を活性化する接合後体細胞変異は、FMCDを含めた広範囲にわたる脳疾患で見つかっている。しかし、一部の細胞に起きた変異が、どのようにして脳半球全体の構造を壊すのかは分かっていない。FMCD患者の脳では、PI3K-AKT-mTOR経路の活性化が見られる細胞がAKT3E17K変異を他よりも多く持つことが分かった。FMCDの原因変異をマウス脳に導入すると、エレクトログラフィック発作が見られ、半球の構造が損なわれた。この変異が発現されている神経前駆細胞ではreelinの誤発現が見られ、これは隣接している細胞で非細胞自律的な移動異常を誘導した。この異常は、少なくとも部分的にはFOX(forkhead box)型転写因子FOXG1に依存した様式でのreelin転写抑制解除が原因であった。下流のAKTシグナル伝達の阻害、あるいはreelinの不活性化によって、細胞移動は元の状態に戻った。これらの知見は、FMCDではAKT-FOXG1-reelinシグナル伝達経路が中心的役割を持つことを示唆していて、焦点性てんかんの一部ではこの経路の阻害剤が治療法として有効である可能性を裏付けている。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度