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筋疾患:筋幹細胞でのジストロフィン発現は細胞極性と非対称分裂を調節している
Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3990
ジストロフィンは分化した筋繊維に発現し、筋鞘の完全性に必要とされる。そして、ジストロフィンをコードする遺伝子の機能喪失変異は、骨格筋の進行性で重篤な変性を特徴とする疾患のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を引き起こす。今回我々は、ジストロフィンが活性化された筋幹細胞(衛星細胞としても知られる)でも高度に発現しており、そこで細胞極性の重要な調節因子であるセリン-トレオニンキナーゼMark2(別名Par1b)と会合していることを見いだした。ジストロフィンが存在しないと、Mark2タンパク質の発現が低下し、細胞極性調節因子Pard3が細胞のMark2が存在する側の反対側にあたる領域に局在できなくなる。その結果、ジストロフィンを欠く衛星細胞では非対称分裂の回数が大幅に減少し、こうした細胞では極性の喪失、異常な分裂パターン(中心体増幅など)、有糸分裂紡錘体の配置方向の異常が起こり、細胞分裂が長引くようになる。総合すると、このような内因性の異常は適切な筋再生に必要な筋細胞前駆細胞の産生を顕著に減少させる。従って、ジストロフィンは衛星細胞の極性および非対称分裂の調節に重要な役割を担っていると我々は結論した。今回の知見は、DMDでの筋萎縮は筋繊維の脆弱性によって引き起こされるだけでなく、内因性の衛星細胞機能不全による再生障害によってさらに増悪していることを示している。