Letter

肥満:微生物相の枯渇は白色脂肪組織の褐色化を促進し、肥満を軽減する

Nature Medicine 21, 12 doi: 10.1038/nm.3994

褐色脂肪組織(BAT)は痩せて健康な表現型を促し、インスリン感受性を改善する働きがある。褐色脂肪細胞はまた、寒冷刺激や運動に応答して白色脂肪組織(WAT、別名ベージュ細胞群)内にも出現し、この過程は褐色化として知られている。本論文では、抗生物質の投与によって腸内微生物相を枯渇させたマウス、もしくは無菌マウスでは、微生物の枯渇によって鼠径部皮下脂肪組織(ingSAT)および性腺周囲内臓脂肪組織(pgVAT)に機能性のベージュ脂肪の出現が促進されることを示す。こうした増加によって、痩せ型マウス、肥満のレプチン欠損(ob/ob)マウス、および高脂肪食を与えたマウスで、耐糖能とインスリン感受性が改善され、白色脂肪量の減少と脂肪細胞のサイズ低下が見られた。代謝のこのような改善は、微生物相が枯渇したマウス皮下の白色脂肪貯留部への好酸球の浸潤、2型サイトカインシグナル伝達の亢進、M2マクロファージへの分化を介して起こった。これらの代謝表現型の出現および皮下脂肪の褐色化は、2型サイトカインシグナル伝達を抑制すると障害され、抗生物質を投与したマウスあるいは無菌マウスに微生物を再定着させると消失した。今回の結果は、健常時および代謝疾患罹患時の微生物相-脂肪シグナル伝達経路とベージュ脂肪の形成について解明の手掛かりを与えるものである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度