Letter
骨粗鬆症:DNAメチルトランスフェラーゼ3aはS-アデノシルメチオニンを産生する代謝経路との共役により破骨細胞分化を調節する
Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3774
代謝の再プログラム化は細胞環境に応じて起こり、分化に影響を与えるが、代謝過程と分化プログラムをつなぐ基本的機構は解明されていない。破骨細胞が分化する際には、より酸化的な代謝過程への移行が起こる。我々は、de novo DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)が、このような代謝変化を破骨細胞分化と共役させる転写因子であることを突き止めた。また破骨細胞形成に不可欠なサイトカインであるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)が酸化的代謝へのこうした移行を誘導し、これにS-アデノシルメチオニン(SAM)産生の増加が伴うことも分かった。SAMが仲介し、Dnmt3aによって起こるDNAメチル化は抗破骨細胞形成遺伝子のエピジェネティックな抑制により破骨細胞形成を調節することが見いだされた。骨恒常性におけるDnmt3aの重要性は、Dnmt3aを欠く破骨細胞前駆細胞は破骨細胞への分化の効率が低下し、Dnmt3aを破骨細胞特異的に欠損させたマウスは破骨細胞数の減少により骨量が増加するという観察結果から明確に示された。さらに、骨粗鬆症モデルで3,3'-二没食子酸テアフラビンによりDNAメチル化を阻害すると、骨量減少が見られなくなった。従って今回の結果は、細胞代謝と分化調節にエピジェネティックな過程が果たす役割を明らかにしており、これはさまざまな骨疾患に対する新しい治療戦略の分子基盤となる可能性がある。