Editorial ダブルブラインドという選択肢 2015年3月1日 Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3817 この3月から、Nature Medicineはネイチャー本誌や月刊姉妹誌とともに、投稿論文の査読に新しい方法を採用している。投稿論文の査読に関して、査読者は匿名だが、著者の名前は査読者に分かるという、従来からのシングルブラインド方式と、査読者と著者の両方を匿名にするというダブルブラインド方式のどちらかを著者が選択できるようになった。この他の主な査読方式としては、査読者と著者の両方が相手の名前を知ることができるオープン方式がある。一般に、オープン方式では透明性が高まり、査読者がより慎重になるという利点があるとされるが、批判的なコメントが少なくなることが懸念されている。一方、ダブルブラインド方式では、著者のジェンダー、年功、評判や所属などに起因するバイアスが減るだろうと言われている。どの方式が優れているのか、これについてはまだ議論が続いているが、2009年に行われた調査(J. Am. Soc. Inf. Sci. Technol. 64, 132-161, 2013)ではダブルブラインド方式の方が有効性が高いとした研究者が76%、一方オープン方式とシングルブラインド方式の支持者はそれぞれ20%と45%だった。我々が最近、独自に行った調査でも、ほぼ同じような結果が得られ、従来のシングルブラインド方式では査読結果にオーサーシップに基づくバイアスがかかることが避けられないと広く考えられていることが分かった。そして我々は、査読方式について再考せざるを得なくなったのである。Natureおよび姉妹誌の編集者の多くはダブルブラインド方式の有効性に対して懐疑的であり、従来の方式でバイアスを減らす方策も考慮されたが、査読者の意識的なバイアスだけでなく、無意識的バイアスまで根絶することの難しさから、ダブルブラインド方式の併用が選択された。月刊姉妹誌の中でNature Geoscienceなどの数誌は2013年からすでにこの方式を試みており、ダブルブラインド方式を選択する著者は予想より少ないものの、査読の質への大きな影響は見られていない。スペシャリストの集まる狭いコミュニティの中で著者を匿名にしておくことは不可能だという考えもある。しかし、オーサーシップに基づくバイアスを懸念して、あるいは自分の主義として、ダブルブラインド方式を選びたいと考える研究者もいるはずだ。我々は査読に関するこの新しい方式について、今後も引き続き検討していく予定である。この問題についての、著者あるいは査読者の側からのフィードバックは大いに歓迎するところである。 Full text PDF 目次へ戻る