Technical Report

検査法:質量分光法を使って、組織生検検体を恒久的に保存できる定量デジタルプロテオームマップへ迅速に変換する

Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3807

臨床検体は、それぞれが本来独自のものであり、量的に有限で複製できない。組織生検などで得られる少量検体は、限られた回数の分析で使い切ってしまうことが多い。今回我々は、少量の組織(1回の生検で得られる量に近い)を迅速かつ再現性をもって、単一の恒久的デジタルファイルに変換する方法を示す。これは検体の質量分光(MS)法で測定できるプロテオームという形をとる。この手法は、圧力サイクリング技術(PCT)とSWATH(sequential window acquisition of all theoretical fragment ion spectra)-MS法を組み合わせたものである。こうして得られたプロテオームマップは、in silicoで解析、再解析、比較や検索を行い、多数の検体にわたって特定のタンパク質を検出および定量することが可能である。我々はこの手法を使って、腎細胞がん患者9人に由来する18例の生検検体を処理し、SWATH-MSフラグメントイオンマップに変換した。これらのプロテオームマップから、全検体にわたって2,000種類以上のタンパク質が高い再現性で検出および定量された。測定されたこれらのタンパク質によって、腫瘍性の腎組織と健康な組織をはっきり区別することができ、腎臓がんの組織形態学的サブタイプも識別できた。

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