免疫:細菌のサイクリックジヌクレオチドは細胞質の監視経路を活性化し、結核に対する自然抵抗性を誘導する
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3813
細菌のセカンドメッセンジャーであるサイクリックジアデノシン一リン酸(c-di-AMP)が宿主の細胞質監視経路(CSP)によって検知されると、微生物に対する防御に重要なI型インターフェロン(IFN)応答が誘導されることが知られている。しかし、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の毒力にc-di-AMPシグナル伝達がどのような機序で作用し、どういう役割を持つのかは明らかにされていない。本論文では、結核に対する抵抗性には、結核菌が産生するc-di-AMPのCSPによる検知が必要であること、またc-di-AMPの量が感染の経過に影響を及ぼすことを示す。ジアデニル酸シクラーゼ(disAまたはdacA)を過剰発現する結核菌株は過剰なc-di-AMPを分泌するため、マウスでインターフェロン制御因子(IRF)経路を活性化し、IFN-βの量を増やし、マクロファージのオートファジーを増加させて毒力が大幅に低下することが分かった。また、結核菌感染の際のc-di-AMPによるIFN-β誘導にはSTING(stimulator of interferon genes)シグナル伝達を必要とすることが明らかになった。c-di-AMPによるIFN-β誘導は、細胞質核酸受容体であるサイクリックGMP-AMP(cGAMP)合成酵素(cGAS)に非依存的であるにもかかわらず、cGASは結核菌感染に対する全体的なIFN-β応答にかなり大きく関わっていることが認められた。まとめると、今回の結果はc-di-AMPが、宿主のI型IFN応答やオートファジーを促進する、結核菌由来の重要な病原体関連分子パターン(PAMP)であることを明らかにしている。これらの知見は、この小型分子の量の調節が結核に対する新しい免疫療法戦略につながる可能性を示唆している。