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糖尿病:膵NMDA受容体の糖尿病治療薬標的としての特性の解析
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3822
NMDA受容体(NMDAR)は神経系では神経伝達に関与し、ニューロンの生存可能性を調節している。それとは対照的に、機能障害が糖尿病につながる膵島やインスリン分泌性膵島β細胞でNMDARが果たす役割はほとんど知られていない。我々は、マウスおよびヒト膵島でのNMDARの阻害が、グルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を増強し、膵島細胞の生存が促進されることを見いだした。さらに、NMDARの阻害によって、グルコース刺激を受けβ細胞が脱分極状態にとどまる時間が長くなり、それと共に細胞質のCa2+濃度が上昇することが分かった。またin vivoでは、NMDARアンタゴニストであるデキストロメトルファン(DXM)によってマウスの耐糖能が高まり、in vitroではDXMの主要代謝物であるデキストロルファンによってエキセンディン4のGSISに対する刺激効果が増幅されることが明らかになった。2型糖尿病(T2DM)マウスモデルでDXMを長期間投与すると、膵島のインスリン含量、膵島細胞量の増大が起こり、血糖コントロールの改善が認められた。また、小規模臨床試験で、DXMの投与を受けたT2DM患者では血清インスリン濃度と耐糖能の上昇が認められた。今回の結果は、NMDARアンタゴニストが糖尿病の有用な補助療法となる可能性を示している。