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ニコチンとインスリン抵抗性:脂肪細胞でのAMPKα2活性化は、in vivoでニコチンによって誘導されるインスリン抵抗性に必須である
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3826
喫煙はヒトで体重減少を促進する一方で、インスリン抵抗性(IR)や高インスリン血症を発症しやすくする。しかし、このような矛盾するように見える影響が生じる機序は明らかになっていない。本論文では、たばこの煙の重要な構成物質であるニコチンが、脂肪細胞でAMPKα2(AMP-activated protein kinaseα2)を選択的に活性化し、AMPKα2は次いでMKP1(MAP kinase phosphatase-1)の334番セリンをリン酸化して、MPK1のプロテアソームによる分解が開始されることを明らかにする。ニコチンによってMKP1量が減少すると、 p38MAPキナーゼとc-Jun N末端キナーゼの両方の異常な活性化が起こり、それがインスリン受容体基質1(IRS1)の307番セリンでのリン酸化増加につながった。IRS1のリン酸化は、IRS1の分解とプロテインキナーゼBの阻害を引き起こし、インスリンが仲介する脂肪分解抑制が見られなくなる。したがって、ニコチンは脂肪分解を増強して、それが体重減少という結果につながるが、同時に脂肪分解によって循環血中の遊離脂肪酸量を上昇させるため、インスリン感受性組織でIRが生じる。これらの結果は、AMPKα2は、脂肪量を減少させるにもかかわらず、ニコチンが誘導する全身性IRの重要なメディエーターとなっていることを明らかにしている。