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ダウン症候群:ダウン症候群モデルマウスでは興奮性GABAARシグナル伝達の機能逆転は、シナプス可塑性と記憶を回復する
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3827
ダウン症候群(DS)は知的障害の遺伝的原因として最も多く、DSマウスモデルではCl-透過性GABAA受容体(GABAAR)を介するGABA作動性伝達の変化が学習障害と記憶障害に大きく関わっている。しかし、DSでGABA作動性伝達の有効性が直接的に評価されたことはない。我々は、DS成体マウスの海馬では、GABAARシグナル伝達が抑制性でなく興奮性であり、GABAARが駆動するCl-電流の逆転電位(ECl)が正電位方向に偏位していることを見いだした。これと一致して、トリソミーマウスおよびDS患者では共に、カチオンCl-共輸送体NKCC1の海馬での発現が増加していた。DS成体マウスでFDA認可薬ブメタニドによりNKCC1を阻害すると、ECl、シナプス可塑性および海馬依存性記憶の回復が見られた。今回の知見は、DS成体マウスではGABAが興奮性であることを実証しており、DS患者での認知障害を救済する可能性のある新たな治療法を明らかにしている。