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ウイルス感染:プロスタグランジンE2とprogrammed cell death 1を介するシグナル伝達は協同的に働いて、慢性ウイルス感染の際のCTLの機能と生存を障害する
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3831
世界人口の10%以上がHIV、C型肝炎ウイルス(HCV)またはB型肝炎ウイルス(HBV)に慢性的に感染しており、こうした感染症はいずれも、重症の疾患や死亡を引き起こす可能性がある。これらのウイルスが生存し続ける一因となっているのは、ウイルス特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の機能および生存の、連続的な抗原刺激による低下である。これに加えて、抗ウイルスCTLはPD-1(programmed cell death 1)などの抑制性受容体の発現を上昇させることによって自律的に応答を抑制して免疫病態を制限している。CTLの機能不全を誘導する経路を突き止めて阻害すれば、慢性ウイルス感染の一掃が促進される可能性がある。我々は、プロスタグランジンE2(PGE2)受容体のEP2およびEP4は、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の慢性感染の間にウイルス特異的CTL上で発現が増加して、CTLの生存と機能を抑制することを見いだした。PGE2とPD-1シグナル伝達を同時に阻害すると、ウイルス制御の改善と機能を備えたウイルス特異的CTL数の増加が起こり、それによって治療効果が見られることが分かった。従ってPGE2の阻害は独立した治療標的候補となるだけでなく、HIVなどによる慢性ウイルス感染症の治療のためのPD-1シグナル伝達阻害に対する補助療法としても有望である。