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がん:MLL遺伝子再構成を伴う白血病で、DOT1LはSIRT1を介したエピジェネティックなサイレンシングを抑制して白血病遺伝子の発現を維持する
Nature Medicine 21, 4 doi: 10.1038/nm.3832
MLL遺伝子(リシン特異的メチルトランスフェラーゼ2Aをコードする遺伝子で、正式名称はKMT2Aだが、ここでは混合型白血病(mixed-lineage leukemia)に関連する遺伝子であることを示すためにMLLと呼ぶ)はMLL融合タンパク質を形成し、これらがDNAに結合して白血病遺伝子の発現を引き起こす。この遺伝子発現プログラムは、ヒストン3リシン79(H3K79)メチルトランスフェラーゼのDOT1L(disruptor of telomeric silencing 1-like)に依存しているため、このような白血病の治療薬としてDOT1Lの低分子阻害剤が有望とされている。しかし、このDOT1L依存性を生じる機構については明らかにされていない。我々は、ゲノム規模のRNAiスクリーニングを行い、DOT1L阻害後に、MLL融合タンパク質が標的として結合する遺伝子の周辺でヘテロクロマチン様状態が確立されるには、ヒストンデアセチラーゼSIRT1が必要であることを見いだした。DOT1Lは、SIRT1とH3K9メチルトランスフェラーゼSUV39H1からなる抑制複合体のクロマチンへの局在化を阻害し、それによってMLL融合タンパク質の標的遺伝子でH3K9アセチル化を増やしH3K9メチル化を最小にすることで開放型クロマチン状態を維持する。さらに、SIRT1活性化剤とDOT1L阻害剤を組み合わせて用いると、MLL再構成を伴う白血病細胞に対する抗増殖活性が増強された。以上の結果は、遺伝子発現の活性化と抑制を制御するクロマチン調節因子間の動的な相互作用には、併用療法が有効となる可能性を示している。