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慢性炎症:T細胞移動のB細胞由来ペプチドによる恒常的調節は、自己免疫疾患や慢性炎症性疾患では障害されている
Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3842
リンパ球の組織への動員は炎症反応の際に見られ、これは厳密に制御される必要がある。それは移動の脱調節が慢性疾患の一因となるからである。今回我々は、B細胞が炎症の間、またアディポネクチンに反応して、14.3.3ゼータデルタ(14.3.3ζδ)タンパク質のタンパク質分解によって生じたペプチド(PEPITEM)を分泌し、それによってT細胞の移動を強力に阻害することを示す。PEPITEMは内皮細胞上のカドヘリン15に結合し、スフィンゴシン-1-リン酸の合成と放出を促進する。これによってT細胞の移動は阻害されるが、他の白血球の動員には影響が及ばない。B細胞上のアディポネクチン受容体の発現およびアディポネクチン誘導性PEPITEM分泌は加齢とともに減弱し、これはこの系に免疫老化が起こることを示唆している。さらに、このような減弱は1型糖尿病もしくは関節リウマチの患者で顕著であり、患者の血清中の循環PEPITEMは、年齢が一致する健康なドナーのそれに比べると減少している。これら2つの疾患では共に、炎症を起こした内皮を横断するT細胞移動に対する強力な阻害効果が見られなくなっている。患者でのT細胞移動の制御は、外来性のPEPITEMの投与によって回復する。さらに、腹膜炎、肝虚血再灌流傷害、サルモネラ感染、ぶどう膜炎およびシェーグレン症候群の動物モデルで、PEPITEMは炎症組織へのT細胞の動員を低下させた。