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神経因性疼痛:セリンプロテアーゼの阻害物質であるSerpinA3NはT細胞由来白血球エラスターゼの阻害により神経因性疼痛を軽減する

Nature Medicine 21, 5 doi: 10.1038/nm.3852

神経因性疼痛は難治性で、臨床における重大な問題だが、その病態生理は十分解明されていない。最近の遺伝子発現プロファイリング研究では疼痛治療の新規標的が突き止められるようになったが、古典的な研究設計では、疑似手術を受けた対照グループと神経損傷グループで数百個の遺伝子の発現に差異があるために検証が難しく、特に疼痛調節の特異性に関して確認が困難であるために結果が不明確になっている。こうした問題を回避するため、我々は2種類の異系交配ラットを用いて実験を行った。これらは、神経因性疼痛に対する過敏性の差異に関して選択的に交配を行った結果として遺伝的に隔離されている点以外は遺伝的に類似している。セリンプロテアーゼ阻害物質であるSerpinA3Nは、神経損傷後の後根神経節(DRG)で発現が増加するが、これはSerpinA3Nのマウスホモログについても確認された。SerpinA3Nを欠損するマウスは、神経因性の機械的異痛症を野生型(WT)マウスよりも多く発症し、WTマウスでは外因性のSerpinA3N投与によって機械的異痛症が軽減された。神経損傷後にはTリンパ球がDRGに浸潤し、白血球エラスターゼ(LE)を放出するが、これはDRGニューロンに由来するSerpinA3Nにより阻害された。LEを遺伝的に欠損させたり、WTマウスにLE阻害薬のシベラスタットを投与したりすると、神経因性の機械的異痛症が軽減された。まとめると本研究は、神経因性疼痛の調節に、セルピンスーパーファミリーのメンバーの1つと白血球エラスターゼ、そして神経とT細胞間のクロストークがこれまで知られていなかった臨床的役割を持つことを明らかにしている。

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