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繊維症:ニロチニブは繊維/脂肪前駆細胞のTNFを介したアポトーシスの促進により慢性筋傷害における筋繊維症を軽減する
Nature Medicine 21, 7 doi: 10.1038/nm.3869
創傷の転帰は炎症環境に左右され、組織が完全に再生されることもあれば、変性と繊維症化が起きることもあり、後者は恒久的な臓器不全につながりかねない。しかし、こうした再生過程に関わるマトリクス産生細胞を炎症細胞が調節する仕組みについては分かっていない。本研究では、急性損傷を受けた骨格筋では、多能性間葉系前駆細胞と浸潤してくる炎症細胞との間の連続的な相互作用が、再生過程の転帰を決定することを示す。浸潤してくる炎症性マクロファージは、腫瘍壊死因子(TNF)の発現を介して繊維/脂肪前駆細胞(fibro/adipogenic progenitor:FAP)のアポトーシスを直接誘導することが分かった。しかし、mdxマウスで見られるような慢性傷害状態ではマクロファージでのトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)の発現レベルが高くなり、これがFAPのアポトーシスを阻止して、マトリクス産生細胞への分化を誘導する。抗繊維化作用を持つと考えられているキナーゼ阻害剤のニロチニブを投与すると、TGF-β1の作用が阻害され、mdxマウスで繊維化を抑えることができた。今回の知見は、TNFが持つ予想外の抗繊維化作用を明らかにしており、慢性損傷では高TNF環境から高TGF-β環境への的確なタイミングでの進行が破綻すると、筋肉の繊維化変性が起こりやすくなると考えられる。