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腎繊維症:Snail1により誘導された不完全な上皮間葉転換はマウスで腎繊維症を進行させ、すでに発症した繊維症を回復させるための標的となり得る

Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3901

進行性の腎繊維症は末期腎不全の大きな原因であり、腎臓機能の維持に使用できる特異的な治療法はない。腎繊維症では筋繊維芽細胞が腎臓間質に集積し、それが細胞外マトリックスの大規模な堆積と器官機能不全につながる。筋繊維芽細胞の起源は多様だが、腎繊維症の際に腎臓上皮細胞が起こす上皮間葉転換(EMT)の影響については、まだ結論が出ていない。我々は、マウス腎臓上皮細胞でのSnai1(snail family zinc finger 1[別名Snail1]をコードする)の再活性化が、腎臓での繊維症の発症に必要であることを示す。損傷によるSnail1の再活性化は、筋繊維芽細胞集団には直接的に影響を及ぼすことなく、尿細管上皮細胞で不完全なEMTを誘導し、これが間質へシグナルを伝達して筋繊維芽細胞の分化と繊維生成を促し、炎症を持続させる。また、Snail1によって誘導された繊維症はin vivoで回復可能であり、マウスの閉塞性腎疾患はSnail1の発現を標的とした遺伝子治療によって改善できることも示す。以上の結果は、腎繊維症にEMTが果たす役割に関する矛盾したデータを整合させ、抗繊維症治療に向けた新規な方法を提示するものである。

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