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腎繊維症:腎繊維症では上皮間葉転換が細胞周期の停止や腎実質損傷を引き起こす
Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3902
腎繊維症は尿細管上皮細胞(TEC)の上皮間葉転換(EMT)を特徴とする。本論文では、腎繊維症の際にはTECが不完全なEMTプログラムを獲得し、基底膜と結合したまま上皮細胞と間葉細胞の両方のマーカーを発現するようになることを示す。繊維性損傷の間にEMTプログラムが働いた結果として、TECでは細胞周期のG2期での停止や、複数の溶質輸送体や溶媒輸送体の発現低下が起こる。また、Twist1(twist family bHLH transcription factor 1[別名Twist1]をコードする)あるいはSnai1(snail family zinc finger 1[別名Snail1]をコードする)のどちらかの遺伝子の導入・発現が、TECでTGF-β1誘導性の長く続くG2期停止を促進して、TECの修復および再生能を制限するのに十分であることが分かった。実験的に誘発した腎繊維症のマウスモデルでは、近位TECでのTwist1あるいはSnai1の条件付き欠失が、EMTプログラムの阻害とTECの完全性維持をもたらし、同時に腎実質での細胞増殖、脱分化などの修復と再生を回復させ、また間質繊維症を軽減した。従って、慢性腎損傷の際にはTECでのEMTプログラムの阻害が抗繊維症療法となる可能性がある。