Letter
がん:膵管腺がんのクローン進化におけるレトロトランスポゾンの挿入
Nature Medicine 21, 9 doi: 10.1038/nm.3919
膵管腺がん(PDAC)は転移後に診断されることが多く、最も致死的ながん形態の1つとされる。我々は最近、LINE-1(long interspersed element-1:L1)レトロトランスポゾンがコードするORF1p(open reading frame 1 protein)の異常発現がPDACで見られることを報告した。LINE-1の発現が、可動性DNAであるLINE-1の体細胞への挿入につながるのかどうかを調べるために、我々は、PDACとそれにマッチする正常組織標本で、標的化した方法を用いてLINE-1挿入部位の配列を解読した。20種類のPDACゲノムで465のLINE-1挿入が確認され、これらは対応する正常標本には存在しないものだった。さらに、マッチする正常組織、原発性PDACと腫瘍転移部位が調べられる症例では、原発性組織と転移性組織で見られる挿入の割合は異なることが分かった。胃と十二指腸に起源を持ち、膵臓病巣は二次腫瘍に当たる2つの膵臓腺がんでも、原発性と転移性部位における挿入の割合に同様の不一致が見られた。まとめると我々の結果は、LINE-1がPDACの遺伝的進化に関わっていることを明らかにしており、消化管の腫瘍では、体細胞への挿入が不連続的に獲得されていると考えられる。