Article

骨折修復:移植片由来のマグネシウムはラットで局所神経からのCGRP産生を誘導し、骨折の治癒を改善する

Nature Medicine 22, 10 doi: 10.1038/nm.4162

生分解性のマグネシウムを含む整形外科用移植片は、骨折修復に用いられて相当な有効性が報告されている。しかし、これらの移植片による骨折治癒改善の基盤となる機序ははっきりしていない。今回我々は、ラットの健常な大腿骨遠位部に超高純度のマグネシウムを含むピンを髄内移植した後に、辺縁皮質骨部位で大量の新たな骨が形成されたことを報告する。この反応は、大腿骨の辺縁皮質と同側の後根神経節(DRG)の両方での神経性のCGRPα(calcitonin gene-related polypeptide-α)の顕著な増加を伴っていた。骨膜の外科的除去、カプサイシンによる知覚神経除去、あるいはCGRP受容体をコードする遺伝子Calcr1またはRamp1in vivoノックダウンは、このモデルで観察されたマグネシウム誘導性の骨形成を大幅に無効化した。しかし、これらの遺伝子の過剰発現は、マグネシウム誘導性の骨形成を増強した。さらに、ラットの単離DRGニューロンでは、細胞外マグネシウムの上昇がマグネシウム輸送体1(MAGT1)依存性、およびTRPM7(transient receptor potential cation channel, subfamily M, member 7)依存性のマグネシウム流入に加えて、細胞内ATPの増加と軸索末端でのシナプス小胞蓄積の増加を引き起こすことが分かった。単離したラット骨膜由来幹細胞では、CGRPはCALCRLおよびRAMP1に依存するCREB1(cAMP-responsive element binding protein 1)とSP7(別名osterix)活性化を誘導し、従ってこれらの幹細胞の骨分化を促進する。さらに我々は新しいマグネシウム含有髄内くぎを開発し、これは卵巣摘出によって誘導された骨粗鬆症のラットで大腿骨骨折修復を促進した。まとめると、これらの知見はCGRPが介在する骨分化の促進にマグネシウムがこれまで知られていなかった役割を果たすことを明らかにしたもので、マグネシウムイオンが整形外科での治療に使える可能性を示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度