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ジカウイルス感染症:再活用目的での薬剤スクリーニングにより見つかった、ジカウイルス感染とそれによって誘導される神経細胞死を阻害する低分子薬
Nature Medicine 22, 10 doi: 10.1038/nm.4184
ジカウイルス(ZIKV)の大発生と、それが小頭症などの神経学的疾患と結びつけられたことは、健康問題に対する世界的緊急事態を引き起こした。我々はこの問題に対処するために、すでに承認された薬剤、臨床試験候補となっている薬剤に加えて、薬理学的活性を持つ化合物を含む約6,000の化合物について薬剤再活用目的でのスクリーニングを行った。その結果、多様な神経細胞でZIKV感染を阻害する化合物、あるいは感染によって誘導されるカスパーゼ3活性を抑制する化合物が複数見つかった。カスパーゼ活性を広く阻害するemricasanはZIKV誘導性のカスパーゼ3活性上昇を阻害し、単層培養中あるいはヒト三次元培養オルガノイド中の皮質神経前駆細胞を保護した。構造的に無関係な10のサイクリン依存性キナーゼ阻害薬は、ZIKVの複製を阻害した。米国食品医薬品局の承認薬で胎児危険度分類基準のカテゴリーBに分類される駆虫薬ニクロサミドもZIKV複製を阻害した。さらに、効果のある薬剤を神経保護薬および抗ウイルス薬という2つのカテゴリーに分け、各カテゴリーから化合物を1つずつ選んで併用すると、ヒト神経前駆細胞およびアストロサイトでZIKVによって誘導される細胞死がさらに起こりにくくなった。我々の結果はこのスクリーニング戦略の有効性を実証するもので、抗ZIKV薬開発のためのリード化合物を明らかにしている。