Editorial FDAの強引な認可 2016年11月1日 Nature Medicine 22, 11 doi: 10.1038/nm.4234 米食品医薬品局(FDA)は、内部専門家とアドバイザーの見解に逆らって、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療用に開発されたエキソンスキッピング・アンチセンス薬Exondys51を迅速承認した。その根拠となったデータには多くの専門家が疑念を呈していて、臨床的な治療効果が実証されていないと見る向きが多い。トップ主導でこうした承認がなされたことへの反発は大きく、FDAの委員会のメンバーからは、この薬は試験結果を証拠として採用する場合のFDAの基準を前例のないところまで引き下げたという声まで聞かれている。だが、DMDには現在のところ認可された治療薬がないため、この決定は患者グループ、臨床医、この製薬企業に投資している人々からは大歓迎されている。治療の選択肢がないまれな疾患の場合、臨床試験の参加者が少なくなるなどの厄介な要因が多いのだが、基準を下げてでも承認をという患者からの声が強まることはあっても、弱まることはまずない。誰もがExondys51がDMDに有効であることを望んでいる。だが、効果が見られない場合は、FDAは迅速に承認を取り下げるべきである。もしそうなれば、今度は患者サイドから強い反対の声が上がるだろう。今回の承認は、規制省庁が決定を下す際に科学的証拠と患者の要求のバランスをとることの難しさを、はっきりと示している。今回の承認を一回限りとして片付けるようなことになれば、問題の余波が収まることは当分ありそうもない。 Full text PDF 目次へ戻る