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神経疾患:家族性自律神経障害のPSCを用いたモデルで疾患重症度の生物学的性質をとらえる

Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4220

家族性自律神経障害(FD)は衰弱性神経疾患で、神経堤(NC)由来の組織が影響を受ける。FD患者ではIκBキナーゼ複合体関連タンパク質をコードしているIKBKAPに全く同じホモ接合性点変異が生じているにもかかわらず、疾患の重症度に著しい差異が認められるが、その理由は不明である。本論文では、ヒト多能性幹細胞(PSC)に見られる、FDの重症度を表す疾患関連表現型について述べる。重度の患者由来の細胞は自律神経や感覚神経などのNC由来の神経組織の細胞運命指定が損なわれていたが、軽度の患者ではこのような変化は観察されなかった。これとは対照的に、重度および軽度のFD患者の細胞は共に、末梢神経細胞の生存に異常が見られ、これは軽度FDでは神経変性が主な原因であることを示している。FD関連変異を遺伝学的に修復すると、発生初期のNC異常は回復したが、感覚神経細胞の運命指定は回復せず、他の因子が疾患の重症度に関わっている可能性が考えられた。全エキソーム塩基配列解読により、重度FD患者で修飾因子遺伝子の候補が突き止められた。本研究は、PSCを用いて作られた疾患モデルが疾患重症度の再現に高い感受性を示すことを実証したもので、これは個別化医療に向けた重要なステップとなる。

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