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サプリメント:天然ポリアミンであるスペルミジンによる心臓保護と寿命延長
Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4222
老化は、心血管系疾患やそれが原因の死亡リスクの上昇と関連づけられている。今回我々は、天然ポリアミンであるスペルミジンの経口補給がマウスの寿命を延長し、老齢マウスでは心臓保護効果をもたらし、その結果として心肥大が軽減し心拡張機能が維持されたことを示す。スペルミジンの摂取によって、心臓のオートファジー、マイトファジー、ミトコンドリア呼吸が亢進し、また、in vivoでは心筋細胞の機械-弾性特性が改善され、同時にタイチンのリン酸化上昇や無症状炎症の抑制が起こった。心筋細胞でオートファジー関連タンパク質Atg5を欠くマウスでは、スペルミジン摂取による心臓保護作用が認められなかった。高血圧誘導型うっ血性心不全のモデルである、高塩分食を与えられたDahl食塩感受性ラットでは、スペルミジン摂取によって全身的に血圧が低下し、タイチンリン酸化が増加し、心肥大と心拡張機能の低下が防止されて、その結果として心不全への進行が遅くなった。ヒトでは、調査表による食事調査の結果から、食餌中スペルミジンレベルの上昇は、低い血圧や心血管系疾患の発生率の低さと相関することが分かった。今回の研究結果は、心血管系疾患に対する実行可能な新規防御手段を示唆している。