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心疾患:CaMKIIはRIP3の基質で、虚血や酸化ストレスによって誘導される心筋でのネクロトーシスを仲介する
Nature Medicine 22, 2 doi: 10.1038/nm.4017
調節されたネクローシス(ネクロトーシス)とアポトーシスは、心筋梗塞、虚血-再灌流傷害、心不全などの重篤な心臓病態に非常に重要な役割を担っている。アポトーシスにつながるシグナル伝達は十分に解明されているが、心筋でのネクロトーシスの基盤となる機構はまだ明らかになっていない。今回我々は、RIP3(receptor-interacting protein 3)が、アポトーシスと炎症に加えて、心筋でネクロトーシスも誘導することを示す。この誘導は、RIP3のパートナーであることがすでに確証されているRIP1およびMLKLを介してではなく、Ca2+カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)を介して起こる。マウスでは、RIP3の欠損あるいはCaMKII阻害が、虚血-再灌流またはドキソルビシン投与によって引き起こされた心筋ネクロトーシスと心不全を軽減する。リン酸化あるいは酸化、もしくはこの両方を介して起こったCaMKIIのRIP3誘導性活性化は、ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore; mPTP)の開口と心筋でのネクロトーシスを引き起こす。以上の知見は、CaMKIIがRIP3のこれまで知られていなかった基質であることを示し、RIP3-CaMKII-mPTP心筋ネクロトーシス経路の全体像を明らかにしており、この経路は虚血や酸化ストレスによって誘導される心筋傷害や心不全に対する治療の標的として有望と考えられる。