Letter
糖尿病:ポリマーで包み込んだヒト幹細胞由来ベータ細胞を用いた、免疫適格マウスでの長期血糖値制御
Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4030
グルコース応答性のインスリン産生細胞の移植は、糖尿病患者で血糖値制御を回復させる可能性がある。現在、膵臓移植や死体膵島移植が臨床的に行われているが、このような方法はレシピエントの一生にわたって行われる免疫抑制療法の有害な影響や、ドナー組織の供給が限られていることにより限界がある。膵臓組織の供給についての懸念は、最近報告されたヒト胚性幹細胞由来のグルコース応答性成熟ベータ細胞(SC-β細胞)によって対処できる可能性がある。ヒト胚性幹細胞は、膵臓補充療法用のヒト細胞を無制限に供給できるかもしれない。免疫抑制についての問題に対処する戦略としては、免疫障壁として機能する多孔質生体材料を使ったインスリン産生細胞の免疫隔離などが挙げられる。しかし、移植材料に対する宿主の免疫応答のために、こうした方法の臨床での実施は困難である。今回我々は、免疫適格な糖尿病動物モデルで、ヒトSC-β細胞を使って長期にわたる血糖値修正を行った初めての結果について報告する。SC-β細胞は、in vivoでの異物に対する応答を軽減できるアルギン酸誘導体に包み込まれて、化学的に誘発された1型糖尿病の動物モデルであるストレプトゾトシン投与C57BL/6Jマウスの腹膜内に移植された。この移植物は、移植の174日後に除去されるまで、免疫抑制は全くなしで血糖値修正を引き起こした。ヒトCペプチドの濃度やin vivoでのグルコース応答性は、治療的に意味のある血糖値制御が行われたことを実証していた。174日後に回収された移植物には生存能のあるインスリン産生細胞が含まれていた。