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免疫:ROR-γtの一過的阻害はTH17細胞の数を減少させ3型自然リンパ球を維持することで、腸炎症を抑制し治療する
Nature Medicine 22, 3 doi: 10.1038/nm.4046
レチノイン酸受容体関連オーファン受容体γt(ROR-γt)は、炎症促進性の17型ヘルパーT(TH17)細胞の分化を誘導するため、慢性的な自己免疫疾患や炎症性疾患での治療標的となる可能性がある。しかし、ROR-γt依存性の3型自然リンパ球(ILC3)は腸での非常に重要な免疫と組織保護を担っており、ROR-γtを標的にすることでは、感染後の宿主防御を障害したり、組織障害を悪化させたりする可能性も考えられる。本論文では、Citrobacter rodentiumによる腸感染を発症しているマウスでROR-γtを薬剤により一過的に阻害すると、TH17からのサイトカイン産生が選択的に減少するが、ILCからの産生には影響がなく、結果的に自然免疫は温存されることを示す。成熟ILCでROR-γtをコードするRorcを一過的に欠損させても、定常状態あるいは感染時のサイトカイン応答は障害されなかった。さらに、ROR-γtの薬理学的阻害は、腸炎症のマウスモデルで有益な治療効果があり、炎症性腸疾患(IBD)の患者の腸一次サンプルから単離されたTH17細胞の数は減少したが、ILCは減少しなかった。まとめると、これらの結果はTH17細胞応答とILC3応答の維持におけるROR-γtの必要性に差異があることを示しており、ROR-γtの一過的阻害が腸の炎症時における安全かつ有効な治療法であることを示唆している。