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がん:黒色腫患者末梢血中での新抗原特異的リンパ球の前向き検出

Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4051

腫瘍内の変異の生じた遺伝子にコードされる産物に由来する腫瘍特異的な変異体新抗原を標的とするリンパ球が見つかるのは、ほとんどの場合、腫瘍常在リンパ球集団内に限られるが、このようなリンパ球が循環血中に頻繁に出現するのかどうかは明らかになっていない。我々は最近、腫瘍内でのプログラム細胞死1(PD-1)受容体の発現が、腫瘍内に常在する腫瘍反応性CD8+リンパ球の患者特異的レパートリーを突き止める指標となりうることを報告した。この知見から、我々は末梢血リンパ球でのPD-1発現が新抗原を標的とするT細胞検出のためのバイオマーカーとして使用できるかどうかを検討することにした。まずハイスループット個別化スクリーニング法を用いて、4人の黒色腫患者のうちの3人の末梢血中に新抗原特異的リンパ球が存在することを突き止めた。循環血中での出現頻度が低いにもかかわらず、これらのCD8+PD-1+細胞集団はそれぞれ、3つ、3つおよび1つの独特な患者特異的新抗原を標的としたリンパ球を含んでいる。しかし、CD8+PD-1-集団にはこのようなリンパ球が含まれないことが分かった。新抗原特異的T細胞と末梢血から単離した新抗原特異的T細胞受容体(TCR)を発現するように遺伝子操作したリンパ球が、自己腫瘍を認識することも明らかになった。循環中CD8+PD-1+細胞と腫瘍に浸潤中のCD8+PD-1+細胞の腫瘍抗原特異性およびTCRレパートリーが似ているように見えることは注目すべきで、これは循環中CD8+PD-1+リンパ球が腫瘍常在抗腫瘍リンパ球を検出する入り口となることを示唆している。従って、PD-1発現をマーカーとして使えば、末梢血中の多様で患者特異的な抗腫瘍T細胞応答を明らかにでき、これは新抗原反応性のリンパ球やTCRを用いる個別化がん治療法を開発するための新規な非侵襲性の戦略につながると考えられる。

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