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糖尿病:p16Ink4aが誘導する膵ベータ細胞の老化はインスリン分泌を増強する
Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4054
細胞の老化は、組織の生理学的性質の加齢に伴う劣化の一因となると考えられている。老化エフェクターp16Ink4aは加齢の間に膵ベータ細胞で発現され、この細胞の増殖能を制限するが、p16Ink4aのベータ細胞機能への影響はよく分かっていない。我々は、トランスジェニックマウスを使いp16Ink4aのベータ細胞特異的活性化が、グルコースによって引き起こされるインスリン分泌(GSIS)を増強することを見いだした。糖尿病マウスではこれが糖恒常性改善につながり、予想外の機能的利益をもたらした。ベータ細胞でのp16Ink4aの発現は、細胞膨張、グルコース取り込み増加やミトコンドリア活性上昇などの老化の特徴を引き起こし、これらがインスリン分泌増加を促進する。GSISはマウスでの正常な加齢の際にも増加し、これはp16Ink4a活性上昇により引き起こされる。成人の膵島にはp16Ink4aを発現する老化ベータ細胞が存在する。また、ヒトベータ細胞系列でp16Ink4aにより誘導された老化は、部分的にはmTOR(mechanistic target of rapamycin)活性とPPAR(peroxisome proliferator-activated receptor)γタンパク質に依存的に、インスリン分泌を増加させることが分かった。今回得られた知見は、p16Ink4aと細胞老化が、ベータ細胞によるインスリン分泌の促進と加齢に伴う正常な機能的組織成熟の調節に果たす新規な役割を明らかにしている。