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白血病:PTENは負の選択に対抗してプレB細胞の発がん性形質転換を可能にする
Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4062
PTEN(phosphatase and tensin homolog)は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)およびプロテインキナーゼB(AKT)シグナル伝達経路の負の調節因子であり、多種類のがんで強力な腫瘍抑制因子として働いている。我々は、プレB細胞型急性リンパ芽球性白血病(ALL)でのPTENの腫瘍抑制的な役割を検証するために、プレB ALLのマウスモデルでPtenのCreによる欠損を誘導した。他のがんで腫瘍抑制因子として働くのとは対照的に、Ptenの対立遺伝子座の片方もしくは両方の欠失はプレB ALL細胞の速やかな細胞死を引き起こし、また白血病細胞レシピエントマウスでの移植細胞の排除に十分であった。ヒトプレB ALL細胞でPTENを小型分子によって阻害すると、AKTの過剰活性化、p53腫瘍抑制因子細胞周期チェックポイントの活性化と細胞死が起こった。プレB ALL細胞でのPTEN機能の喪失は、自己反応性プレB細胞受容体シグナル伝達の急性活性化(自己反応性B細胞除去のための欠失チェックポイントを作動させる)と機能的に同じ結果をもたらした。我々は、PTENを標的とした阻害とAKTの過剰活性化が、自己反応性B細胞除去のためのチェックポイントを作動させ、これはヒトALLで薬剤耐性に打ち勝つための新たな戦略になると考えている。