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がん:上皮のカルシニューリンは微生物相に依存する腸腫瘍発生を制御する
Nature Medicine 22, 5 doi: 10.1038/nm.4072
腸管上皮細胞(IEC)では炎症関連経路が活性化されており、これは大腸がん(CRC)の病因の1つとなっている。カルシニューリンは転写因子のNFAT(nuclear factor of activated T cells)ファミリーの活性化に必要とされるホスファターゼであり、CRCでは発現が上昇している。そこで我々は、腸腫瘍発生におけるカルシニューリンの役割について調べた。カルシニューリンとNFAT因子群は、初代IECで構成的に発現しており、腸腫瘍では腫瘍関連微生物相の層化とtoll様受容体シグナル伝達が障害された結果として選択的に活性化されることが分かった。上皮のカルシニューリンはNFAT依存的にがん幹細胞の生存と増殖を助け、マウスでは腸腫瘍発生を促進する。さらに、ヒトCRCでこれまでに見つかっている体細胞変異はカルシニューリンの構成的活性化と関連づけられ、一方でNFATの核移行はCRCによる死亡増加と関連している。以上の結果は、共生微生物相に由来するシグナルを統合する上皮細胞内在性経路が、腸管での腫瘍発生を促進することを明らかにしている。